百合という価値観

この記事について

この記事は百合 Advent Calendar 2015 - Adventarの3日目。本体は後半部分のポエム。

メバエ5について

メバエっていうのは不定期刊行の百合アンソロジーで、つぼみやひらり、がなくなって百合姫が色々残念になっちゃった今とっても期待されているアンソロジーなんやね。

そのメバエの5が去る11月30日に出たわけやけど、これが一部でとっても評判が悪いってことで調べてみるとなにやら穏やかじゃなさそうな雰囲気。、まあ元々買って読むつもりだったけどこれはちゃんと読んで感想を言わなあかんなと思ってこの記事を書いた次第。

で、実際に読んだ感想なんやけど普通に良い作品が何本かあって良かった。ただ1つだけ「これが百合アンソロジーに載ったのはちょっと残念やなあ」という作品があったのは事実。あと叩かれた作品がもう一つあったんやけどその作品はいま残念と言った作品に比べればずっと穏当な表現で描写も丁寧にされてて巷での批判は多分とばっちりなんだろうなあという思いを抱いた。

実のところ問題になっている作品も終わりは百合なんですよ。ただその途中でまずいラインに抵触してしまったのと、そして作者コメントがとても残念……。

こういうこともあって「百合アンソロジーに守ってほしいお約束」についてちょっとポエってみた。ここから先はメバエからは離れた話だから問題の作品がなぜ残念なのか的な話は一切しないよ!

百合が守る価値観

例えばメガネ属性のアンソロだったらメガネを必ず書くというお約束がある。じゃあ百合におけるお約束ってなんだろう?百合におけるお約束というのはもちろん「百合であること」なんだけどこれはメガネの例と違って人によって差があって、とっても曖昧なものなんだ。レズビアンだけが百合ってわけじゃないしヘテロやバイの百合だってある。

でもね、曖昧だから何をやっても良いってわけじゃあない。百合アンソロジーには守るべき約束、価値観というものがある。それは女性同士の関係は他の関係に劣らない第一級の関係だという価値観だ。

それは愛であっても良いし憎しみのような関係であっても良い。とにかくそれが「価値あるもの」として描かれることが重要だ。たしかに(好まれないだろうが)ヘテロセックスを描いたとしてもその価値観を守ることはできる。身体が奪われたとしても心の繋がりは揺るがないという描写があればそれだけでも救われることがある。ただやはり百合アンソロジーに載せる作品(特に短編)であれば女性同士の関係をより強く描くか、そうでなけれ他を薄める必要がある。

そういうことが理解されていないことがわかってしまう作品(やコメント)を百合アンソロジー上で目にすると怒りよりもむしろ悲しみを感じる。

ただ単にボーダーラインの上にあるがゆえに好き嫌いの別れる作品と、百合という価値観を否定してしまってる作品は明確に違う。百合アンソロジーでボーダーラインに挑戦しちゃうのは賛否両論あるだろうけど、価値観を否定しちゃうのはそれとは違う次元でとても残念で悲しいことだと言わなきゃいけない。

おわりに

作家のやる事に寛容である姿勢は良い面もあるけど、それはアンソロジー全体が守るべき価値観を全員が了解して初めてできることなんだと思う。メバエ自体は良い作品が何本もあるアンソロジーだから絶対に続いて欲しいと思う。身長差百合やフォアグラ百合も良かったし。